突然に自分の暮らしにも「介護」という現実があらわれた。
まったくの想定外だったから、やることが大盛りで一気にやるべきことが降ってきた。病院の送迎やデイサービスの施設手配、介護用品の購入に役場への手続きなどなどなど。介護大国である日本の現状を垣間見た気がした。
それでも身内のことだから仕方ない。こっちがアレコレと世話をするのは特に問題はないのだけれど、一番堪えるのは、当の介護されている本人が、日々老いていくこと。
骨折で一時入院くらいのはずが、体が浮腫んで、内臓にまで影響が。毎日することがなくてベッドに横たわるだけだから気落ちして精神的にも疲労が隠せない。まるで、ちょっとしたひずみがあっという間に広がって決壊するダムのようだと思った。
今や、介護や支援を必要としている介護や支援が必要な人は600万人を超え、公的介護保険制度が始まった2000年度と比べると、2.5倍に。これからもこの数は増え続け、介護難民や人手不足が深刻な問題になると言われている。
色々と調べていると、介護や支援が必要になった途端に病気がちになったり、老け込むことは結構あることだと知った。考えてみれば、体の自由がきかなくなったり、やりたいことができなくなったりするわけだから、当然と言えば当然かもしれない。
やはり、大事なのは生きがいなんだ。そう思った。
八戸市内でこうした‘生きがい’に寄り添って介護事業を行う株式会社池田介護研究所という事業所がある。
代表取締役の池田右文さんは、15年間高齢者介護の業界で働いた後、「せっかく通所しても1日中動かない状態で過ごしていてもったいないな。もっとみんながやりたいことを自由にやれたらな」と、2013年に八戸で個別支援型のデイサービスを起業した。
利用者の皆さんが「やりたい!」と思うことをデイサービスの中に取り入れて、介護サービスを提供する。もちろん、生活支援や身体介助なども行うが、農業や料理教室、ヨガやネイルサロン、太極拳、旅行と利用者の方々は、まるで遊びに行くかのように施設に通う。
池田さんの思惑通り、利用者の皆さんは明るい表情をしている。「今日は畑さ行って山菜採ったんだ」。「寒ぐなったら大根漬けねばね」ー。まさしく‘生きがい’がここにはあると実感する。
9月2日には八戸市一番町に「無添加お弁当二重まる」をオープン。利用者の皆さんが楽しく料理を作り、その料理を事業所の昼食にしたり、お弁当にしたりで販売している。
「利用者さんの経験やスキルはまだまだ現役で活躍できる。制限もあるが、これから社会保障費が増大する中で、やれることを自分でやることはとても大事。その中で、社会の一員として当たり前のように暮らせて、活躍できる環境をつくっていきたい」と池田さん。そのかたわらで池田さんの話しに耳を傾ける利用者の皆さんの笑顔が印象的だった。
帰り際に自家製みそソフトクリームをいただいた。もちろん、味噌は利用者の皆さんがつくったものだ。
大豆感がしっかりした濃厚な味噌と、コクのあるこれまた濃厚なクリームが溶け合い、満足感が高いソフトクリーム。おばあちゃんが「とってもおいしいから」と掛けてくれた言葉で、いっそう美味しく感じた。
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