毎年、何かのビジネスプランコンテストに出ることにしている。
面白いし、失敗できるいい機会だから。
失敗は成長の近道だ。それも一番の。
自分の本業は公認会計士。(とか税理士とか司法書士とか行政書士とか)。
毎日、顧問先のビジネスを主に財務面から分析し、利益と預貯金が増えるようにアドバイスをしている。
スモールビジネスには成功の方程式がある。
簡単に言うと、人件費や家賃などの固定費をなるべく抑え、食品など時間経過で価値がなくなってしまう在庫は持たず、サービスの単価を高価格に保つことだ。
プロとして関わるため、失敗は許されない。
チャレンジには失敗のリスクを説明し、大きく資金流出する可能性が高い場合には、アラートを鳴らして経営者として判断をしてもらう必要がある。
どうしても、アドバイスは保守的になりがちだ。
公認会計士は財務・会計のプロで、ビジネスをゼロから産む専門家ではない。
人が作ったプランを審査して財務面のリスクを洗い出し、成功するかどうかを判断することは得意だけど、ゼロからプランを作ることは一般的にしない。
だけど、いま八戸近隣で求められているのは新しいビジネスを作ることだ。
人口減少が進むと、経済規模が縮小する。
何かの模倣でもいい。地域独自のエッセンスを加えて、地域内でお金が循環する仕組みを作らなければならない。
自分は単なる公認会計士から進化して、「起業する公認会計士」になりたい。
自分で複数のビジネスを経営していれば、顧問先へのアドバイスもより質が高くなる。
いくつか士業以外の会社も経営しているけど、今年はさらに経営するビジネスが増える。
アドバイスと違って、自分でやるなら、失敗しても責任を取ればいいだけだ。
でも、うまくいくかはやってみないとわからない部分もある。
その点、プランを審査してもらうだけなら、リスクはゼロだ。
時間がかかることと、ちょっと恥ずかしいことだけを我慢すればいい。
だから、コンテストには「少し突拍子もないもの」を出すようにしている。
うまくいくかわからないけど、実現したらいいな~、というもの。
今回出場したのは農水省主催のコンテスト「INACOME」。
農村・漁村での起業を促し、地方創生につなげることが目的だ。
提案したプランは田舎(南部町)のおばあちゃんとか住民のバックストーリーにスポットをあてたウェブメディアを作り、月千円で田舎の住民と文通をしてもらうサービス。
年に一度は特産品も届く。
南部町にはこんな言葉があるらしい。
「人集まらざれば町なりがたし」
地域住民に伝わる口伝で、昔々の役人の言葉だそう。
飢饉で農作業ができなくなったとき、南部町はよそ者を積極的に受けいれた。
今もその考えは同じで、活躍する移住者が数多くいる。
南部町は美しい農村だ。
名産はさくらんぼやリンゴ、洋ナシとか。
「バナナ以外にできないものはない」と言う人もいる。
いま、南部町は飢饉以来の大ピンチだ。
跡継ぎがなく廃業する農家が続出している。
家族でブドウ狩りに行く果樹園も、旦那さんが亡くなって奥さんが継いでいるものの、あと数年で廃業らしい。
いま必要なのは南部町を応援する1万人ではなく、毎年来てくれる1000人だ。
そこで考えたのが、「日本国民全農家」を目指し、手紙で田舎のおばあちゃんと親戚のように付き合えるプロジェクト「農業助っ人BANK 結」だ。
南部町は東京から約3時間。
「田舎のおばあちゃん家」にぴったりのロケーションだ。
手紙のやり取りで個人間の有機的なつながりを作り、南部町を「じぶんごと」としてとらえてもらう人を増やすプロジェクトにする。
仕事柄、毎日のように困難な状況で心が弱っている人の相談に乗っている。
相談者が心からの、とてもよい笑顔を見せる瞬間がある。
問題が解決できたときではない。
それは、解決後に温かい言葉をかけたときだ。
当然だが、人は誰でも優しくされると嬉しい。
南部町は山と畑に囲まれ、都会にはない空気に満ちている。
そのような場所は全国各地にあるけれど、もう一つ、南部町にはよそ者を積極的に受け入れる文化がある。この場所にくれば、どんな人も肯定してもらえるはずだ。
田舎ではない「南部町」を好きになってもらうには、人と人のつながりが必要だ。
デジタルのやりとりは簡単だけど、いまいち重みがない。
大半の人が今はほとんど使わない、手紙は温かみを感じる特別の体験だ。
そこで、グリーンライフを体験したい都市住民と南部町の住人をマッチングし、文通してもらう。
ウェブメディアで南部町の魅力を伝え、登録希望者を募る。
登録者から月1000円を徴収し、見返りに毎月手紙と、年に一度、南部町の特産品が届く。
他にも、農家民泊、果樹収穫、ファットバイクなどのアクティビティを格安で提供する。
登録者500人で運営コストをペイでき、1000人登録で安定利益を得られる試算だ。
このプランで儲けることは考えていない。
主なメンバーは三人で、全員が副業だ。自分は士業、ダイチ(工藤大地)はリノベーションの専門家、イチネー(根市大樹)は南部町でカフェを経営している。このプロジェクトから収入を得なくても、来る人が増えれば、自然に利益を得られる仕組みだ。
手紙を書く人は主に農家だ。
都会の人とつながるほど直販ルートが増え、収入が増える。
一億総SNSの時代で、期待しているのは来てくれる人の発信力だ。
南部町の生産品はとても品質が高く競争力があるものの、発信が上手くない。
まず体験してもらうことが重要で、体験した人の発信力に町の未来をかける。
仙台でこのプランをプレゼンしたところ、東京で行われる決勝には進めず。
スケールは無理だけど、面白いと思うんだけどなぁ。
審査員の「地方創生するにはチャレンジャーをとにかく増やすこと」というコメントに強く共感した。
人口減少で地方全体が縮小するのだから、変化に対応しなければならない。
停滞は衰退とイコールだ。
自分もチャレンジを続けるし、青森でもっともっとチャレンジャーが増えるといいな。
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