青森県初! 日本で8人目となる車いすバスケットボール国際審判員 2020東京パラリンピックへ!!

2016年に国内トップリーグが統一されBリーグが誕生し、国内のバスケットボール競技の人気は、高まり続けている。さらに2019年は、日本人初の1憶円プレーヤー富樫勇樹選手、NBAから日本人初のドラフト一巡目指名され大活躍中の八村塁選手、また、NBAで2way契約で活躍する渡邊雄太選手、NBA下部リーグのDリーグで活躍する馬場雄大選手、そして、オリンピックで正式種目になった3X3、など日本のバスケット界は盛り上がり続けている。

 

そんなバスケットボール界に車いすバスケットボールという競技があるのをみなさんご存じですか?

 

そして、青森県出身八戸市在住で世界の舞台で活躍するバスケットマンがいるのをご存じですか?

 

今回ご紹介するのは、青森県初、日本で8人目の車いすバスケットボールの国際審判員になり、今年の東京パラリンピックへ派遣される26名の国際審判員(うち日本人2人)の中の1人に選ばれた、小野裕樹氏だ。

 

現在も現役のバスケットボールプレーヤーである小野氏。プレーヤーとして一線で活躍してきた小野氏が、なぜ審判に、そして、なぜ車いすバスケットボールに興味をもったのかを聞いてみた。

 

バスケットボールを始めたきっかけを教えてください。

小4の時に担任の先生に誘われて始めました。

 

私も昔一緒にプレーさせていただきましたし、プレーを見てきましたが、プレー中は、いつも誰よりも声を出している印象が強い小野さん、チームメイトは心強いと思います。もともとそういうプレーヤーでしたか?

小学生からポイントガードとしてプレーしていたため、チームの司令塔として仲間に声をかけることを意識してプレーしていました。声を出すことは相手が強くても、シュートが入らなくて、うまくいかないことがあってもいつでも誰でも同じようにできることだと感じたためです。

 

私も小野さんと同じく、小学校からバスケットボールをやっています。ブランクはありますが、プレーするのは楽しくて今でも個人的に体育館を借りて練習したり、息子の部活の練習に参加して体を動かしています。一線で活躍している現役プレーヤーだとなかなか審判員になろうというマインドにはならないと思います。プレーヤーから審判をやろうとしたきっかけ、そして、車いすバスケットの審判になったきっかけを教えてください。

審判には正直全く興味がありませんでした。車いすバスケも自分でプレーをするのが楽しくてチームのみんなと一緒に活動していたのですが、青森県で大会をしようとした時に青森県には車いすバスケの審判員がいないということを始めて知りました。そのころチームのアシスタントコーチをしていましたが、審判がいないのであれば、自分がそこに携わることでチームに還元できる部分があるのではなかと考えたからです。また、その時福島県から審判員として来てくださったのが、後に日本の審判長となる菅野英輔氏でした。(アテネパラリンピックから4大会連続派遣されている世界のトップレフリー)世界を知る菅野英輔氏に指導をいただきたいとその場でお願いしたのを昨日のことのように思い出します。最初は車いすバスケの審判員を専門にやろうと思っていました。しかし、審判員をしていくには普通のバスケの審判員とリンクする部分がほとんどであり、全国的にも車いすの審判だけをやっているという方はほとんどいないということを知りました。車いすバスケの審判員としてより高いレベルを求めるのであれば、普通のバスケでもそのようなレベルで活動できる審判員になりなさいという教えをいただき、普通のバスケの審判員を40歳目前で開始しました。生涯プレーヤーと思っていた自分には複雑な部分もありましたが、やると決めたらとことんという性格ですので、審判員をすると決断してからは今日まで必死に取り組んできました。

40歳目前でバスケットの審判員を始めた小野氏。JBA(日本バスケットボール協会)の審判員のライセンスは、S級、A級、B級、C級、D級、E級とあって、もちろん普通であれば、この審判ライセンスに限らず、階級順(JBA認定ライセンスであればE級)に取得していくのですが、なんと小野さんは、いきなりB級取得に踏み切ったそうです。そして、一発合格というなんたる強者。やるとなったらやりとおす性格の小野氏。仕事がお休みの週末は、県内、東北中駆け回って、ほぼボランティアで審判をやっています。

なぜ、車いすバスケットに興味をもったのでしょうか。

とにかく楽しいんです。これは百聞は一見に如かずで、本当に魅力ある競技です。ある程度バスケを経験してきた自分が全くのド素人のように何もできませんでした。あまりにもできなさ過ぎて、逆にそれが心地よく感じました。チームのみんなも温かく迎えてくれて、すぐに虜になってのめりこみました。その頃、私は車いすの生徒たちが通う学校に勤務していたこともあり、生徒たちに社会に出てからのよりリアルな情報を届けるためには自分自身が社会で生活している車いすユーザーとつながっている必要があると感じました。ただつながるといっても何をきっかけにすればよいかと考えた時にお互いの好きなことを共有するのが良いと感じ車いすバスケチームに一緒に活動したいと申し出ました。いつも学校では自分が生徒たちに教える立場なのに、車いすバスケに行けば障害をもつ方々から教わることばかり、そんな逆転の立場も心地よかったです。スポーツに限らず生活全般においてどのように過ごしているかなど、よりライブ感のある情報を知ることができました。

小野氏の職業は、特別支援学校の教員。恩師へのあこがれがあって、体育教師を目指したそうだ。体育の評価はだれもよりもだんとつでよく、体育は得意だったと話す小野氏。評価はいつも最高評価だったのが、ある日、評価がさがり、自分よりどうみても運動音痴の友達が、最高評価をもらっていたそうです。その時の先生になぜ?と詰め寄った小野氏は、衝撃をうけたと話す。先生曰く、「お前はは、たしかに体育はだれよりもできる。でもな、実力の半分もだしていないじゃないか。あいつは、自分の実力以上にがんばっていた。その差だよ」と告げられた小野氏は、ひとりひとりをちゃんと見て、向き合っている先生にあこがれを抱いた。体育教師は、ひとりひとりの体調やレベルにあわせた指導が必要で人の命を預かる職業でもあると語る小野氏。医学をベースに学べる順天堂大学に進学し、救急やスポーツ科学を学んだ。また、障害児教育にも力をいれており、ひとりひとりに対してカリキュラムを考えて、指導をしていくやりがいをみつけ、生涯、自分が仕事をしていくんだったら、自分が本当にやりたいことはこれだということで現在に至っている。

車いすバスケットボールに出会うまで、バスケットがうまいこと、強いことが正義だと思っていたが、考え方が変わったと話す。

車いすバスケットの醍醐味を教えてください。

普通のバスケは一人のスーパースターがいれば、ある程度試合になるかもしれません。いわゆる漫画の世界のようなワンマンチームという状況ですかね。車いすバスケではそれがありえないんです。とにかくチームメイト同士の協力が必要なんです。個の力で打開することのできないチームプレーの連続です。1人1人の障害の状況に応じて持ち点が定められて、チームの運動機能などが平等になるように配慮されています。また、車いすなどもルールで細かく定められていて、全世界平等なルールのもとにチームでどのように協力連携し、コミュニケーションをとっているのかというところが醍醐味だと感じています。

東京パラリンピックに派遣される審判員に選ばれたとお聞きしました。おめでとうございます!いろいろな種目に出場する選手ももちろん過酷な競争だと思いますが、審判員に選ばれるのも過酷だと思います。どのようなフローでオリンピックの審判員に選ばれるのでしょうか。

2014年に東北ブロックからの推薦を受けて日本公認審判員へトライしました。その後、2016年にA級審判員の審査を通過し、国内の強化講習会を経て日本からの推薦をいただき2017年にタイで行われたアジアオセアニアゾーンの大会で国際審判員の審査を受け、日本で6年ぶり8人目の国際審判員となることができました。その後はU25世界選手権に招集され決勝を担当するなど、日本の審判技術は間違いないという自信をもつこともできました。それと同時に自分の中で2020東京パラリンピックは夢から明確な目標へと変わりました。昨年の12月にIWBF(国際車いすバスケットボール連盟)からメールが届きパラリンピックへ派遣される26名の審判員に選ばれたことを知りました。「少しでも菅野英輔氏への恩返しができればという思いと、これまで共に切磋琢磨してきた仲間たちへの感謝や使命感、責任感を強く感じました。」また「このような状況を理解してチャレンジさせてくれた職場の皆様や家族に対しても感謝の気持ちでいっぱいになりました。」

審判は、どの競技もそうだと思いますが、非常に重要な役割だと思います。選手が競技できるのも審判やテーブルオフィシャルをはじめとする運営に携わっている方々あってのことだと思います。審判員として心がけていることや気をつけていることがあったら教えてください。

まずは、選手がいて初めて我々は審判という役割を果たすことができます。プレイヤーズファーストという言葉がありますが、まずはプレイヤーへそのような気持ちをもっています。またRespect for the gameもテーマとしています。バスケの試合が一つの商品であるなら、その商品価値を損なうことのないようにより良いものを選手、コーチ、観客などへ届ける。そういう意味で試合に向けて敬意を払って準備し、試合終了のブザーまでしっかりと役割を果たし、終わった後はその内容についてフィードバックし次に向けて準備する。その繰り返しですね。

 

最後に、、なんか答えが容易に想像できますが、、、(笑) バスケットボール以外に趣味とかありますか?

(笑)これが、呆れるほどにバスケット一色です。自分でプレーするのも、試合を見るのも、指導をするのも、雑誌を読むのも、そしてもちろん審判をするのも。バスケット以外の趣味は皆無ですね。常に生活の中心です。

予想通りの答えでした (笑)

やると決めたら絶対にやるバスケットマン。

そして、生徒ひとりひとりとしっかりと向き合い、ひとりひとりのことを考え、指導をしていく究極の教育者。

決してぶれないビジョンをもつ小野氏には、大変感銘をうけました。

車いすバスケットボールについては、まだ生でみたことがないので、この機会にどこかに観戦に行ってみようかと思います。

そして、普通のバスケットの審判としても活躍する小野氏、大変わかりやすいジャッジ、ジェスチャーで試合と会場が締まります。

また、バスケットボールプレーヤーとしても44歳とは思えないパフォーマンスで圧巻です。

 

車いすバスケットボール競技に国際審判員として小野氏が派遣される東京パラリンピック、男女の日本代表チームとともに小野裕樹氏をぜひ応援しましょう!

東京パラリンピック2020 車いすバスケットボール

2020年8月26日~9月6日

競技会場:武蔵野の森総合スポーツプラザ、有明アリーナ

日本車いすバスケットボール連盟の公式ホームページ

 

 

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